2019.06.21 Friday
聴竹居
京都・大山崎にある藤井厚二設計の「聴竹居」(1928年)は見に行く。この住宅は築90年、台風などで外観は一時期かなり被害を受けていたが、修復された。サーモンピンク色の外壁と黒い木製の構成が美しい。南側の縁側は、ウインターガーデンのようにガラスで被われ、庭側に突き出た二隅には(庭を眺めるためか)柱がなかった。しかし、風を室内に取り入れるために様々な工夫が施されていた。西側にある通風口から小上がりになった三畳の下に入ってくる装置は、自然エネルギーを利用したパッシブな建築計画といえる。また、藤井はインテリアデザインから、照明、家具、暖房器具、時計までデザインしている。室内の壁には和紙が張られていたが、かなり黄ばんでいた。当初はもう少し白く、室内もそれゆえ室内も明るかったことが予想できる。しかし、当時和服を着た妻のために、座面に奥行きがある椅子のデザインや子供部屋など、家族一人ひとりへ思いが形になっていた。1930年代半ばに撮られた藤井家の家族写真があるが、夫婦は和服、3人の子供たちは洋服、家族のライフスタイルがそのまま住居に反映した、等身大のデザインになっている。日本の将来の住まいを考えて設計された実験住宅であり、「環境共生住宅の原点」とパンフにあったが、原点は各地に根差した古民家であり、日本の建築教育はこの部分が、日本文化も含め上手く接木ができてこなかったように思えるのだが。